確定給付企業年金(以下、DB)をご存じでしょうか。
DBは、年金アクチュアリーの活躍フィールドですので、
年金アクチュアリー(候補生)の方以外は、なじみが薄いとかもしれません。
学生の方は、アクチュアリー就活をするのであれば、
年金アクチュアリーの話を聞く機会もあるかと思いますが、
年金アクチュアリーの話を聞く機会もあるかと思いますが、
年金アクチュアリーのメインフィールドであるDBについて簡単な知識があるだけで、
仕事のイメージがつかみやすくなるかもしれません。
また、アクチュアリー試験の1次試験の年金数理の問題には、
確定給付企業年金という名前こそ出てこないものの
日本のDBを念頭に作られた問題が度々出題されます。
年金数理をこれから受験される方も、
DBについて、なんとなくイメージがわかっていると、
年金数理の理解も早いのではないかと思います。
というわけで、DBのことが何となくわかるようになる記事を
何回かにわけて書いていきたいと思います。
<DBとは>
確定給付企業年金制度とは、日本における企業年金制度の一種です。
「確定給付企業年金法」という法律に基づいた制度であるため、
「確定給付企業年金法」という法律に基づいた制度であるため、
国がお墨付きを与えているといえる制度です。
先に一言で説明してしまうと、
「給付額があらかじめ決められている企業年金制度」です。
知らない人にはなかなかイメージしにくい制度ですので、
順番に詳しく説明していきたいと思います。
<企業年金制度とは>
企業年金制度とは、文字通り、「企業が実施する年金制度」です。
もう少し詳しく説明すると
「企業が毎月一定のお金を積み立てて、従業員が退職したときに年金を支払う制度」です。
したがって、お金(掛金)を出すのは企業、お金(給付)をもらうのは従業員です。
まだあまりピンとこないかもしれません。
もう少しイメージアップしてみましょう。
「退職金制度」はご存じでしょうか。
退職金制度とは、従業員が退職した際に、
企業が毎月のお給料やボーナスとは別に、
「退職一時金」として、ある程度まとまった金額を退職する従業員に支払う制度です。
日本の企業の多くが採用しておりますので、
退職金制度の方がイメージしやすい方が多いと思います。
退職金制度も企業年金制度も、
従業員が退職したときに企業が従業員にお金を支払う制度です。
「企業年金制度は、退職金制度が形を変えたもの」と思っていただくと、
イメージしやすいかもしれません。
企業年金制度の仕組みについて、退職金制度と比較しながら、
もう少し詳しく見てみましょう。
まず、1つ目がお金の流れについてです。
退職金制度の場合は、企業から従業員に直接お金が支払われます。
従業員が退職する都度支払いが発生しますので、
退職者がいなければ支払いは発生しませんし、退職者が多ければ多額の支払いが発生します。
企業年金制度の場合は、企業から支払われたお金がまず企業年金制度の積立金にプールされます。
そして、従業員が受け取るお金はそのプールされた積立金から支払われます。
企業から従業員に直接支払われることはありません。
支払は毎月定期的に積み立てられるため、退職者の数で支払額が変動することはありません。
2つ目は支払い方法です。
従業員への支払い方法も退職金制度と企業年金制度で異なります。
退職金制度は、(一般的には)退職金の全額(例えば1000万円)を一度に従業員に支払います。
従業員は1000万円もの大金を急に手にすることになります。
一方、企業年金制度は、年金制度という名前がついているくらいですから、年金で支払います。
1000万円を例えば10年間の確定年金(利息分を無視すると毎年10万円)として支払うことになります。
一時金としても受け取ることができる場合がほとんどですので、
従業員は、一時金で受け取るか年金で受け取るかを選ぶことができます。
3つ目は、資産運用です。
資産運用を活用するかどうかも大きな違いです。
退職金制度は、積立金がありませんので、
一般的には資産運用は行いません。
企業年金制度は、積立金を運用することでその収益も原資となり積立金に加わります。
したがって、最終的なトータルの企業の支払額は企業年金の方が一般的には少なくなります。
企業年金制度は、主にこれら3つのような特徴があります。
<DBとDCの違い>
日本の主な企業年金制度は、2つあります。
1つが確定給付企業年金制度(DB)、
もう1つが確定拠出年金制度(以下、DC)です。
DBを説明するためには、
この2つを比較しながらの方がわかりやすいため、
両方の制度を説明します。
確定給付企業年金制度(DB)とは、
文字通り、「給付」が「確定」している制度です。
DBとは、「Defined Benefit」の頭文字を取ったもので、
Benefit(給付)がDefined(確定)している、という意味です。
一方の確定拠出年金制度とは、
こちらも文字通り、「拠出」が「確定」している制度です。
DCとは、「Defined Contribution」の頭文字を取ったもので、
Contribution(拠出)がDefined(確定)している、という意味です。
詳しく見ていきましょう。
企業年金制度は、
①掛金を拠出する
②積立金を運用する
③給付を支給する
という流れになります。
これを実際に運営していくために、
1つ目の発想として、「③給付額を先に決める」という考え方があります。
つまり「③給付額を決めて、(②運用収益を予想して)①必要な掛金額を拠出する」
という考え方です。
これがDBです。
給付額が事前に決められているため、もし運用成績が悪かったり、
他の要因で積立金が足りなくなった場合には、掛金で帳尻を合わせます。
運用成績が良かった場合は、積立金に加算されるだけです。
給付額は、あくまで当初決められた通り支払われます。
もう1つの発想は、「①掛金の拠出額を先に決める」という考え方です。
つまり「①掛金拠出額を決めて、②運用結果に基づいた③給付額を支給する」
という考え方です。
これがDCです。
掛金額が事前に決められているため、もし運用成績が悪かった場合には、
給付額が減少します。
逆に、運用成績が良ければ、給付額は増加します。
企業が支出する掛金額が、当初決められた額から変動することはありません。
以上がDB(とDC)とは何かという簡単な説明です。
<まとめ>
DBについて、この記事を読む前よりも少しイメージできるようになったでしょうか。
まとめますと、冒頭に触れたように、
DBとは、「給付額があらかじめ決められている企業年金制度」です。
さて、DBの概要はイメージできたかもしれませんが、それと同時に、
・DBを導入したらどんないいことがあるの?
・給付額をあらかじめ決めるってどういうこと?
・掛金ってどうやって決めるの?
・積立金ってどれくらい必要なの?
などなど、(きっと)疑問が湧いてくると思います。
次回以降は、これらを1つずつ解説していきます。