確率論的シミュレーション


先日、勤務先のレイアウト変更があり、キャビネットから古い書籍や資料等を処分しましたが、部下がニコニコしながら『この書籍もらってもいいですか?』と尋ねてきました。

よく見ると、『PRESIDENT(2015年10月19日号)』で、若手アクチュアリーが金利・為替等に関するシミュレーション用に5,000本のシナリオをExcelで作成するというものでした。(幸い、ネットで記事が公開されています。https://president.jp/articles/-/18429

『アクチュアリー正会員が100人もいるのかあ。羨ましいなあ。。。』という人事部長のコメントを聞きながら、後輩から、『先輩は余裕で、確率論的シミュレーションを行えますよね?』と聞かれ、咄嗟に、『当たり前じゃないか。』と思わず大見栄を切ってしまいました(泣)

そこで、今回のコラムでは、『超初心者』の私から見て、同じく『超初心者』の方々に役立つような、確率論的シミュレーションに関する情報を幾つかご紹介いたしましょう。

1.教科書はあるのか?
少なくとも、日本語の「教科書」はないように思えますが、英語の書籍であれば、例えば、以下のような書籍が参考になると思われますので、英語の学習も兼ねて、読み進めると良いかもしれません。

『Stochastic Models in Life Insurance (EAA Series) 2012th Edition by Michael Koller (Author)』https://www.springer.com/gp/book/9783642284380

『Stochastic Modeling – Paper & E-Copy ISBN: 978-0-9813968-1-1 (Print)』https://www.actuaries.org/iaa/IAA/Store/Item_Detail.aspx?iProductCode=STMODEL

2.パソコンがなくてもできるのか?
確率論的シミュレーションは、パソコンがなくてもできます。実際、サイコロを振って出た目に応じてシナリオを変化させれば、立派な確率論的シミュレーションとなります。
なお、コンパの幹事さんが常に悩む『お釣りの準備』を、確率論的シミュレーションを通じて体験できる資料が公開されておりますので、ご覧いただければ幸いです。http://www.bunkyo.ac.jp/~nemoto/lecture/seisan/2001/monte2001.pdf
なお、このように「サイコロを振る(=乱数を発生させる)」という点が、決定論的シナリオと確率論的シナリオの違いと言えるかもしれません。

3.動画
日本アクチュアリー会からも案内されている『actuview』https://www.actuview.com/のサイトで、右上の『虫眼鏡マーク』に、例えば、”Stochastic model” などのキーワードを入れて検索すると、英語ではありますが、動画で確率論的シミュレーションを説明してくれます。
リスニングの勉強も兼ねて、積極的にチェックしたいですね。

4.Excelの分析ツール
Excelファイルのメニューリボンから「データ」-「データ分析」を選んでいただければ、乱数発生やヒストグラム作成など、統計ツールが手軽に利用できますので、確率論的シミュレーションにも役に立ちます。
なお、メニューリボンに「データ分析」が出ないという方は、Excelファイルの「オプション」-「アドイン」から、「分析ツール」を選べばメニューに追加されますので、ご安心ください。

5.ExcelのVBA(マクロ)
ExcelのVBA(マクロ)を用いて確率論的シミュレーションのプログラムが公開されていると良いのですが、残念ながら、発見出来ませんでした。
一方、Excelの関数だけを用いても、確率論的シミュレーションが出来るようでして、例えば、以下のサイトにあるExcelファイルのセル内容を用いれば、初心者でも簡単にシミュレーションができますよ。
『Excelで操る!正規乱数を用いた株価シミュレーション』http://godfoot.world.coocan.jp/Kabu-Sim.htm

6.R
アクチュアリージャーナル第112号では、『Rを用いたデータの可視化技術 解説書(データサイエンス関連基礎調査WG)』が掲載されていますので、筆者を含めて、これまでRを積極的に使用してこなかった方々にとっては、タイムリーな貴重な情報源といえるでしょう。

7.参考論文
日本アクチュアリー会の『会報』では、例えば、以下の論文が確率論的シミュレーションと関係が深いと思われます。
『確率論的手法を取り入れたシミュレーションに関する一考察(会報第62号第1分冊(2009年))』
『確率論的保険料算出方法に関する一考察(会報第55号第1分冊(2002年))』

特に、以下の論文では、Rのプログラムも公開されておりますので、上述のアクチュアリージャーナル記事と併せて、実際にプログラムを組みながら学習されると、より理解が深まるでしょう。
『IBNR備金の推計方法の精度について(会報第67号 (2014年))』

いかがでしたか。今回ご紹介しました『確率論的シミュレーション』は、「生命保険会社の保険計理人の実務基準」でも登場するシミュレーション手法ですが、残念ながら、現在のIT環境では、確立された手法はまだ発展途上にあるものと思われます。
しかし、アクチュアリー第2次試験(専門科目)の公式解答にも、しばしば登場するように、最新の技術を習得することに常に努めて、アクチュアリーという専門職として相応しい行動に心がけたいものですね。

(ペンネーム:活用算方)

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