アクチュアリー2次試験対策(価格と価額)


社会人として、仕事上、鉛筆やボールペン等を用いて文字を書く機会はほとんどないと思われますが、アクチュアリー試験(特に、第2次試験(専門科目))では、未だに、直筆で文字を書くことが必要です。

また、直筆で文字を書かない場合でも、例えば、パソコンで文書を作成する場合、『大部分を占める』ことを意味する「タイソウを占める」を漢字に変換する場合、大宗なのか太宗なのか、一寸したことに悩む機会もあるかもしれません。(←前者が正解なのですが、一昔前のWordファイルでは、後者しか登場しませんでした。)

そこで、今回のコラムでは、アクチュアリー2次試験対策の一環として、間違いやすいと思われる『価格』と『価額』の使い分け等をご紹介いたしましょう。

1.『価格』と『価額』の違い
漢字はもちろん違いますが、実は、『読み方』も違います。『価格(=カカク)』で『価額(=カガク)』です。
しかし、『契約者価額』など、普段の実務では、『価額』を『カカク』と呼ぶこともありますので、少なくとも、読み方としての違いはないのかもしれません。

2.(取得)価額、(帳簿)価格
紛らわしい漢字の覚え方として、頻出語句とセットで覚えてしまう方法があります。
例えば、『取得価額』と『帳簿価格(=簿価)』というように、実務で頻繁に登場する用語で暗記してしまえば忘れにくいでしょう。

3.保険業法第112条など
『株式の評価の特例』に関する条文ですが、
“保険会社は、その所有する株式のうち市場価格のあるもの(中略)の時価が当該株式の取得価額を超えるときは、(以下略)。”
 という記述がありますので、『取得価額』と『市場価格』という組み合わせで覚えた方が忘れにくいかもしれません。
同様に、保険業法施行規則第第86条では、
“(前略)「時価」とは、保険金等の支払能力の充実の状況を示す比率の算出を行う日の適正な評価価格に基づき算出した価額をいう。”
 という記述がありますので、『適正な評価価格に基づき算出した価額』というフレーズで覚えた方が忘れにくいかもしれません。

4.保険業法第115条
『価格変動準備金』に関する条文ですが、
“(前略)所有する株式その他の価格変動による損失が生じ得るものとして(中略)計算した金額を価格変動準備金として積み立てなければならない。(以下略)”
 という記述があります。
『価格変動』と『計算した金額』という組み合わせは間違いにくいと思います。

5.相続税法第11条の2
『相続税の課税価格』に関する条文ですが、
“(前略)当該相続又は遺贈により取得した財産の価額の合計額をもつて、相続税の課税価格とする。”
 という記述がありますので、保険業法以外の法律でも、『価格』と『価額』を使い分けていることがお分かりいただけると思います。

6.国債入札情報
保険計理人の意見書で用いる金利シナリオ等の基となる、財務省ホームページ(https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/index.html)に『入札情報』というサイトがあります。
これは、毎月の国債の入札結果等を公開しているサイトですが、以下のような表現があります。
“6.価格競争入札、(1)応募額、(2)募入決定額、(3)募入最低価格”
ここでも、『価格』と『価額』を使い分けていることがお分かりいただけると思います。

7.ひらがなで書くと減点される?
社内勉強会などで、受験生の方から、『論述問題等で漢字でなく“ひらがな”で答案を作成した場合、減点されるのか?』という質問を受けることが多いのですが、その場合、『あなたが、もし試験委員だとしたら、あるいは、主務官庁の職員だとしたら、“ひらがな”で書かれた答案や認可申請書類をみたら、どのように感じますか?』と逆質問するようにしています。
一般的な表現はともかくとして、法令等に登場する専門用語は、少なくとも原文通りに書けるようにすることが“ご作法”だと思います。

いかがでしたか。アクチュアリー試験の答案に限らず、文章を正確に書くことは読み手側の心証も良くなるでしょうし、逆に、誤字や脱字の類がある文章を読まされると、当然ながら不快に感じることも少なくないと思われます。
第1次試験(基礎科目)とは異なり、専門的知識に加えて、問題解決能力も問われる第2次試験(専門科目)では、解答の中身や流れを考慮することはもちろんのこと、正確な表現に努めることも併せて検討したいところです。

(ペンネーム:活用算方)

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