リスクとは何か?


平成25年4月1日付けで日本アクチュアリー会が公益社団法人へ移行した際、
『Think the Future, Manage the Risk 』が同会のスローガンとして制定されました。

このように、アクチュアリーには、“リスク管理のプロ”というイメージがありますね。

ところで、“リスク”とは何でしょうか?

例えば、生命保険会社のソルベンシー・マージン基準では、「保険リスク」、「第三分野保険の保険リスク」、「予定利率リスク」、「最低保証リスク」、「資産運用リスク」および「経営管理リスク」の6つが、会社のリスクとして定義されています。(保険業法施行規則第87条)

これらのリスクは定量的に把握可能、つまり、一定の計算方法が定められていますので、決算時期などに生命保険会社が自社のリスク量を把握した上で、別途計算されるマージンと組み合わせて、ソルベンシー・マージン比率として公表しています。

では、会社のリスクは、すべて定量的に把握可能なのでしょうか?

答えは、Noです。

実際、金融庁が公表している“保険会社向けの総合的な監督指針”には、次の記述があります。

“リスクの特定に当たっては、保険引受リスク、資産運用リスク(市場リスク、信用リスクなど)等のみならず、定量的に把握し難い流動性リスクなど、保険会社が重要と認識している全てのリスクを考慮しているか。”(Ⅱ-3-2-2 主な着眼点)

つまり、定量的に把握し難い(=計算が難しい)リスクについても、会社が重要と認識していれば、それらのリスクも全て考慮しなければなりません。

では、計算が難しいリスクを把握するためには、どうすれば良いのでしょうか?

そこが、まさに、アクチュアリーとしての腕の見せ所であり、アクチュアリーの存在意義の一つといっても過言ではありません。

与えられた計算式などに沿って正しく数値を導くことは、アクチュアリーが最低限満たすべき要件ですが、単なる計算作業のみで満足せず、常に、新しいアイデアがないか、洗練された手法がないかを追究し続ける心意気を持つことが、アクチュアリーとして非常に大切だと思います。

その昔、「料理の鉄人」というテレビ番組で、和食の鉄人である中村孝明氏が次のようなコメントをされていました。

“小麦粉を一番美味しく食べる方法は、おそらく、きつねうどんだろう。しかし、きつねうどんだけで満足していては「鉄人」とは言えない。「鉄人」に一歩でも近づくためには、常に、新しいメニューや、別の食材との組み合わせなど、既成概念にとらわれない自由で大胆な発想を抱き続ける姿勢が大切だと思う。”

プロの仕事とは、本当に奥が深いですね。

アクチュアリーを目指す人も、アクチュアリーになった人も、ぜひ、中村氏のメッセージを念頭に置きながらプロの仕事を全うしたいですね。

あわせて読みたい ―関連記事―