―アクチュアリーを目指したきっかけを教えてください。
就職活動の先輩社員訪問で、生命保険会社に行き「アクチュアリー」という職種を初めて知りました。当時、大学で数学を学びながらも「こんなに勉強して将来何かの役に立つのだろうか」と思っていたので、“数学を使った仕事がある”ことに感動。この道を目指そうとすぐに思いましたね。
当時、損害保険会社にはアクチュアリーとして活躍している方がほとんどいなかったのですが、「自分が損保業界でのアクチュアリー第一人者になるんだ」と意気込み、積立保険のパイオニアといわれていた損害保険会社への入社を決めました。
―アクチュアリー正会員になるまでの道のりを教えてください。
正会員になるまで8年もかかったので、誇れることはないんですけどね(笑)。入社してすぐに勉強を始め、「一週間の勉強スケジュール」を組んで、平日夜と土日に集中して時間を作っていました。1年目に2科目、2年目にさらに2科目に合格し「なんだ、楽勝だ!」と調子に乗ったのが間違いでしたね(笑)。3年目になると、当時所属していたシステム部の仕事が忙しくなり、さらにプライベートでは結婚。公私ともに充実して勉強から少し離れてしまい、その後4年間は勉強したりしなかったりを繰り返しました。社内にアクチュアリー勉強仲間が増えてきた6年目から、一緒に勉強したり情報共有をしたりと本腰を入れ、8年かけてようやく正会員に。勉強仲間ができたことで、自分の勉強量がいかに少なかったのかを痛感。仲間の存在は大きかったと思います。
―当時、アクチュアリーを目指す仲間がいない中でも勉強を続けられたのはなぜですか。
入社当初から、根拠なく「自分が、この会社初の数理課を作り、その初代課長になるのだ」と決意していたんです。そのためにはアクチュアリー正会員にならなければ説得力がないだろうと思っていました。
―アクチュアリー正会員になったことで、仕事にはどのような変化がありましたか。
正会員になるまでは、システム部で責任準備金や住宅ローンの返済金の計算をシステムに落とし込むプログラミングに近い仕事を担当していましたが、正会員になった翌年に商品開発部に異動しました。他の大手損害保険会社と共同で新商品開発に従事するなど、優秀な方とプロジェクトを進める機会に恵まれ、そして、目標通り、積立業務部「数理課」の課長にも就任。キャリアの幅は広がりましたね。
また、現在所属するアメリカンホーム医療・損害保険株式会社には60歳で転職をしてきましたが、長いキャリアを築けているのも、資格を持ち、専門分野の知識をブラッシュアップしてきたからだと思います。
―現在の仕事内容と、そのやりがいについて教えてください。
現在は、責任準備金の計算や予測、保険料決定に向けた事故発生率の分析など、保険計理人として保険料や責任準備金等の合理性や適切性をチェックしています。部には20代、30代の若く優秀なアクチュアリーが多く、力をつけることに貪欲で前向きなメンバーばかり。仕事だけでも多忙なのに、日本アクチュアリー会の「ムーンライト・セミナー」やASTIN研究会に参加し、仕事外でも難解なテーマに必死で取り組んでいたりと、本当に感心します。ジョブ・ポスティング制度で海外拠点への異動を希望できるなど、会社の制度も充実しており、会社の風土として「自らのキャリアは自ら切り開く」というマインドを推奨されているんだと思います。自分の子ども以上に年の離れた若手たちから刺激をもらえるのは、何よりも面白く、貴重な時間を過ごせていると思いますね。
―これからアクチュアリーを目指す方に向けてアドバイスはありますか。
自戒を込めて言いますと、英語の勉強には早めに取り組んだ方がいいということ。英語ができることで、入ってくる情報量がまったく変わってくるからです。
日本のアクチュアリー正会員は約1500人。その中で論文を書いている研究者は一握りです。しかし海外に目を向けると、アクチュアリーの母数も多く、論文数も日本とは比較になりません。日本にも素晴らしい論文はたくさんありますが、英語で論文を読めれば、さらに最先端の事例が読めるのです。英語をやらなければ、すばらしい知見に触れることができないと私も危機感を抱いて英語を勉強しています。頭の柔らかい若いうちから、少しずつ始めることをオススメします。
**プロフィール
アメリカンホーム医療・損害保険株式会社 保険計理人 数理部 部長。日本アクチュアリー会正会員。77年に早稲田大学理工学部数学科卒業。損保会社に入社後、グループ関連の生保会社、外資系損保会社やネット系損保会社を経て、現職へ。