アクチュアリーのCR


2020年3月9日(月)に『アクチュアリーのCV』というタイトルでコラムを作成しましたが、その後、保険会社の決算業務に触れたり、生命保険協会のホームページ等を閲覧する機会に恵まれて、CRという略語も多く見かけることに気付きました。
そこで、今回のコラムでは、アクチュアリーを含めた保険会社にとっての『CR』について、幾つかご紹介いたしましょう。

1.危険準備金(Contingency Reserve)
ソルベンシー・マージン比率では欠かすことのできない危険準備金ですが、会社によっては、CRと呼ばれるようです。
筆者は以前、監査法人に勤務した経験があるのですが、監査先でExcelファイルをチェックしていたときに、CRと名前が付けられたファイルを大量に見つけて、『CRって何だ?』と戸惑った苦い思い出があります。
今思えば、危険準備金Ⅰ~Ⅳに沿って、単にCRⅠ~CRⅣという名前が付けられただけだったとは思いますが。

2.支払備金(Claim Reserve)
保険金等支払金だけでなく、支払実績を正しく把握するためには、この支払備金も必要不可欠な要素ですね。特に、経過年数別の支払データを分析する場合には、支払備金を含めて分析することで、いわゆる、発生主義のデータになりますので、より実態に近い支払率等が計算できます。
なお、1996年の保険業法改正で、法令上正式にIBNR備金が導入されましたが、支払備金やIBNR備金の実務担当者がアクチュアリーでない会社もありますので、アクチュアリーとしては支払備金にも積極的に関与した方が良いように思えます。
ちなみに、損害保険会社の保険計理人は支払備金の確認も義務付けられていますが、生命保険会社の保険計理人には義務付けられていません。恐らく、生保と損保で支払備金のウェイトが異なる(損害保険会社の方がウェイトが大きい)ことがその要因と思われます。
支払備金の計算方法としては、チェイン・ラダー法、ボーンヒュッター・ファーガソン法、マック・モデル等があるようです。

3.企業の責任(Company Responsibility)
企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)とも言われますが、保険会社に限らず、ありとあらゆる業務に共通の概念ですね。
お客様のおかげで企業経営が成り立っていることをしっかりと噛みしめながら業務を行っていれば問題ないのですが、耐震偽装や食品偽装など、不祥事に接する度に、企業の責任を深く痛感することが多いものです。

4.企業の評判(Company Reputation)
いわゆる『風評リスク』が企業にとって重要なリスクとなりますが、一方で、定量化が難しいリスクとも言えます。
従業員自らの一挙手一投足がお客様から常に見られているという自覚を持つとともに、社会人として恥ずかしくない行動を心がけたいものですね。

5.コミュニティ・リレーションズ(Community Relations)
生命保険協会ホームページ(https://www.seiho.or.jp/activity/social/cr/)に登場するCRですが、『地域との良好な関係づくり』という意味だそうです。
全国にあまねく普及している生命保険であるからこそ、地域の方々との良好な関係を構築することが重要であると言えるでしょう。

6.カスタマー・リレーションシップ(Customer Relationship)
お客様との接点を、如何にして多く持てるかが、ビジネスを遂行する上で重要なテーマとなります。
特に、通販チャネルやインターネットチャネルなど、営業職員や代理店を通さない販売経路を採用している場合、お客様とのタッチポイントを如何に多くすることが出来るかが、継続率の向上など、業務品質の改善に大きな影響を与える可能性があります。

7.コンプライアンス・ルール(Complaiance Rule)
法令等遵守は、金融機関に限らず、すべての業種、地方公共団体、学校、政党などにおいて常に求められるものです。
特に、保険会社の場合には、保険料控除や保険金非課税枠など、その公共性の高さが故の様々な優遇措置が導入されています。
コンプライアンスという概念自体は、相当に幅広いもののように見えますが、実は、至極当たり前のことを要求されている、つまり、法令等をルールをきちんと守って、結果的に、お客様や社会全体に良い効果をもたらすという、ある意味当然の行為である点を、今一度、再認識した上で、新型コロナウイルスを含めて、これからの保険会社のあるべき姿を全員が一丸となって考えていく必要があるように思えます。

いかがでしたか。上記の7つのCRに加えて、『キャリア革命(Career Revolution)』を8番目のCRとして追加しても良いかもしれません。アクチュアリーが先頭に立って、よりよい社会づくりに強く深く貢献すべき時が来ているように思えてなりません。

(ペンネーム:活用算方)

あわせて読みたい ―関連記事―