2019年度資格試験結果(科目別合格率など)が2020年3月19日に、日本アクチュアリー会ホームページの会員サイトで公表されました。特に、生保数理の合格率は32.0%で、平成24年度以来の30%超えとなりました。(なお、平成24年度の合格率は49.2%でして、当分、破られることはないものと思われます。)
合格率が高かったため、今年の生保数理は初受験の方々の占率が昨年に比べて多くなることが想定されます。
そこで、今回のコラムでは、生保数理を中心に、アクチュアリー試験のうち第1次試験(基礎科目)を初めて勉強される方々に向けて、教科書の読み方や過去問への取り組み方など、役に立つと思われるアドバイスを行いましょう。
1.教科書の目次を持ち歩く
「教科書を常に持ち歩く」ことが理想的な勉強スタイルですが、上下巻合わせて700ページ近くあるため、実現は難しいかもしれません。
そこで、是非おすすめしたいのが、目次部分をコピーなどして常に持ち歩く方法です。
初めのうちは、第○○章に何が書いているのかを覚えるのに苦労するかもしれませんが、慣れてくれば各章の記載内容が頭に入ってきて、最終的には、過去問などの具体的な問題を見て教科書のどの辺りに登場する概念、記号などがイメージできるようになれば一人前です。
そのためには、教科書の目次部分を常に携帯して、電車の待ち時間やトイレの個室に籠っているときなど、眺めるようにすることが重要になります。
2.参考書は手を付けない
毎年6月末頃に公開される「資格試験要領」には明記されているのですが、アクチュアリー試験のうち第1次試験(基礎科目)の出題範囲は教科書に限定されます。
一方、同要領には「参考書」も記載されているため、教科書と並行して参考書も学習する受験生がいらっしゃるようで、貴重な勉強時間を費やしてしまっています。
もちろん、余力があれば参考書を読むこと自体は否定しませんが、やはり、過去問で60点以上取れるレベルに到達するまでは、教科書に集中して勉強された方が良いと思います。
3.問題を解きながら教科書の本文を読む
生保数理に限らず、資格試験全般に通じることですが、教科書を最短で理解する最も効率的な方法は、「問題を見ながら、教科書を読む」というテクニックです。
初めて教科書を読む方は、「そんな無茶な。。。」と感じるかもしれませんが、以下のようにして学習すれば効率的であることがお分かりいただけるでしょう。
例えば、教科書(上巻)82ページ問題(2)では、「100,000人」および「1,387人」という2つの数値を用いて「死亡者の平均年齢」を求めるのですが、一般常識として、「死亡者の平均年齢」=「平均寿命(=0歳の平均余命)」と考えれば、80歳くらいの数値になるだろう、と推測できます。
したがって、「100,000」と「1,387」を用いて80を導くにはどうすれば良いかを考えてみれば、「100,000÷1,387≒72」という計算式、つまり、「総人口÷年間死亡者数≒平均寿命」という関係式が成り立つのでは、と推測できます。
実際、教科書(上巻)75ページ(2.6.13)が上記の関係式に当たります。
つまり、「教科書⇒練習問題、過去問など」という流れではなく、「練習問題、過去問など⇒教科書」という流れで学習すれば効率的に進めることができます。
なお、教科書の練習問題や過去問をチェックされる際、初めて学習される方は、できるだけ問題文の短いものから取り組むようにすれば、解答に用いる公式の種類も少ないでしょうから、学習スピードが益々速くなるでしょう。
4.章の順序に拘らない
教科書は全部で16個の章から構成されますが、最近の出題範囲としては、第1章から第14章(ただし、第10章および第11章を除く)が定着しているようです。
しかし、第1章から読み始める必要はまったくありません。
むしろ、論点ごとに章を並べ替えて読み進めることをおすすめします。
例えば、営業保険料であれば第1、2、4および7章ですし、責任準備金であれば第5および8章です。
したがって、第3章は後回しにして、第13章と並行して学習するのがおすすめです。
なお、第6章は出題頻度が極めて少なく、他の章の内容で解ける可能性が高いため、一番最後に参考程度に読まれるのが良いでしょう。
5.「保険料年払全期払込、保険金年度末支払、養老保険」から始める
上記の4.とも関連しますが、例えば、教科書の第4章はかなりのページ数になっていますので、読み進めるのに相当の時間がかかります。
そこで、初学者の方は、頻出条件である「保険料年払全期払込、保険金年度末支払、養老保険」に絞り込んで教科書を読み進めるという方法を是非、実行してみてください。
そして、上記の条件設定で問題がある程度解けるようになれば、例えば、保険金の支払方法を年央にしたり、保険種類を養老保険から終身保険に変えてみたりして、徐々に学習範囲を拡大するのが良いでしょう。
6.過去問はすべて読む
日本アクチュアリー会ホームページのトップ画面の右上にある「書籍・ライブラリー」から「資格試験過去問題集」に進めば、昭和37年からのすべての過去問がアップされていりことがお分かりいただけるでしょう。
よく、「過去問は何年分やれば良いの?」と質問されますが、個人的意見としては、すべてに目を通す、ことを強くおすすめします。
もちろん、分量が多いため、すべてを独力で解く必要はなく、公式解答に目を通すだけで十分ですので、ご安心ください。
なお、昭和時代の教科書は、現在の教科書と異なりますので、もし、見たことがない公式が模範解答に登場した場合は、その問題は飛ばして構いません。
特に、最近の出題傾向としては、昭和時代の問題を穴埋め形式等にしたリメイク問題が出題されることが多いように見受けられますので、試験対策として昭和時代の過去問に目を通しておくことは有効は手段だと思われます。
7.Excelファイルを活用
保険会社の商品開発部門等にお勤めの方であれば、勤務先のExcelファイル等で営業保険料や責任準備金等を具体的に計算されることも多いと思いますが、学生の方や同部門以外にいらっしゃる方は、Excelファイルを用いて実際に営業保険料等を計算する機会は少ないかもしれません。
しかし、生保数理の場合には、Excelファイルと非常に相性が良い記号・概念(例.計算基数など)が登場しますので、過去問を解く場合にExcelファイル等を上手く活用されるとい良いでしょう。
なお、生保数理の過去問のうち、平成27年度問題1(7)の①では、公式解答が(I)となっていますが、教科書に登場する別の公式を用いれば、(J)も正解となるように見受けられます。
恐らく、死亡・就業不能脱退残存表を定めずに、qxi などの値を設定してしまったことが原因と考えられますので、逆に、問題文に与えられたqxi などの値をすべて満たすような死亡・就業不能脱退残存表をExcelファイルで作成してみるというのも勉強になるでしょう。余力がある方は是非、チャレンジしてみてください。
いかがでしたか。この「アクペディアコラム」のトップページの右上にある「虫眼鏡」マークに「生保数理」などと入力して検索いただければ、上記以外にも合格の秘訣など(例.生保数理記号の覚え方:https://www.vrp-p.jp/acpedia/249/ など)が紹介されていますので、併せてご活用頂ければ幸いです。
(ペンネーム:活用算方)