2019年4月から、『働き方改革』の一環として、『高度プロフェッショナル制度(高プロ)』が導入されましたが、導入1ヶ月で採用事例が1人というように、まだ、普及には程遠しという感が否めません。
一方、高プロの対象者としては、例えば、金融工学等を用いた商品開発など、アクチュアリーの職務領域と密接な関係がありそうです。
そこで、今回のコラムでは、アクチュアリーの仕事と高プロの関係について、個人的意見も交えながら、思いつく点を幾つかご紹介したいと思います。
なお、当コラムの作成に当たり、厚生労働省の資料『高度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説(https://www.mhlw.go.jp/content/000497408.pdf)(以下「資料」という)』を参考にしていることを、あらかじめお断りしておきます。
1.高プロとは
「資料」によれば、高度プロフェッショナル制度とは、高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象として、労使委員会の決議及び労働者本人の同意を前提として、年間 104 日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずることにより、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度のようです。
アクチュアリーとの関係でいえば、上記の条件中、『職務の範囲が明確』という点がやや議論になりそうですが、少なくとも、『高度の専門的知識等を有し』、『一定の年収要件を満たす』という点では、アクチュアリーにも当てはまりそうです。
また、「資料」によれば、「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革で、(中略)働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指します、とあり、この『選択できる』という点が強調されています。
しかし、「資料」によれば、『対象労働者の同意』を得ることが要件とされているようで、(揚げ足取りをするつもりはないのですが)「選択できる」という点と「同意を得る」という、相反するような規定が盛り込まれているのも事実です。
『選択』と『同意』という点は、今後、改善すべき余地があるかもしれませんね。
2.高プロのメリデメ
そもそも、『働き方改革』の目標の1つに、『無駄な残業の廃止』がありますので、所謂、『裁量労働制』が一番のメリットと考えられます。つまり、与えられた仕事に対して自分自身の裁量で労働時間等が工夫できて、短期間で仕事を終えることができれば、結果的に、高い時給を得ることができるという仕組みです。
しかし、『短期間で仕事を終えることができれば』という条件はかなりハードルが高く、「野党」の先生方からすれば、際限なく労働を強いられるという『ブラック』的要素の側面が拭えないかもしれません。
なお、成果主義という考え方自体は、一般的な人事制度として定着しているものと思われますので、制度そのものというより、むしろ、その制度をいかにして運営していくかという、制度の『使い手』の問題と言えるかもしれませんね。
3.アクチュアリーは高プロなのか
さて、いよいよ本題ですが、結論から言えば、アクチュアリーは高プロではないようです。実際、「資料」の9ページに『対象となり得ない業務の例』として、『× 保険商品又は共済の開発に際してアクチュアリーが通常行う業務』が例示されています。
実は、高プロの検討段階において、アクチュアリーを対象とする案が浮上していたらしいのですが、どういうわけか、最終的には対象外になってしまいました。
推測の域を脱しませんが、アクチュアリーを特別扱いすることに対する抵抗勢力の存在が否めません。
4.理想的な働き方とは
『無駄な残業』ほど、労使双方にとって『無駄』なものはないでしょう。しかし、自分が生み出す価値に対して、より良いものを顧客に提供するという姿勢は決して間違ったものではありません。
たとえ、毎日残業しても、よりよいサービスが提供できるのであれば、そのような働き方を『プロ』として選択することもあり得るでしょうし、良い仕事をすることで、かえって、心身ともにリフレッシュすることもあるでしょう。何よりも、笑顔あふれるお客様から『ありがとう。あなたのおかげで助かりました。』と言ってもらえて、お金を得るというのも悪くないと思います。
仕事とプライベートのバランスをいかにとっていくか、現代人特有の悩みかもしれませんね。
いかがでしたか。最近読んだニュースの中で、特に、以下のニュースが印象的でした。
《キタムラでは、クールビズなどまかりならん》
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190607-00010000-nikkeisty-life&p=3
「キタムラにはこれまで苦しい時代がたくさんありました。そのときに銀行も行政も百貨店も助けてくれませんでした。助けてくれたのはお客様。だから、お客様を裏切るようなことはやらない。服装も信頼されるものでなければいけないのです」
アクチュアリーと雖も、その給料・報酬の源泉は保険契約者から払い込まれる保険料であるはずです。保険契約者の信頼を得るためにはどうすれば良いのか、常に考え続けなければならないですね。
(ペンネーム:活用算方)