令和時代がスタートしました。
第二次世界大戦からの復興と世界経済史上類を見ない高度経済成長に沸いた「昭和時代」
バブル崩壊と保険業法改正、大震災、保険会社破綻、ネット生保、リーマンショック、マイナス金利、検査局廃止など、激動の時代であった「平成時代」
「令和時代」の保険業は、どのような姿になるのでしょうか?
そこで、今回のコラムでは、アクチュアリーの視点も交えながら、これから起こるであろう様々な出来事を、素朴にかつ大胆に予言したいと思います。
1.プリンシプルベースの保険監督
フィールドテストの導入で、監督指針等で明記されている「自己責任原則」が徐々に浸透しつつあります。先日、損保総研での講演会にお邪魔したのですが、2020年代を目途に、同テストをアンケートベースから法第128条の報告徴求レベルまで高めることを目指しているかもしれない、とのコメントを伺い、勤務先のERMチームと今後の方向性などを協議しました。
今のような「ルールベース」の保険監督ではなく、原理・原則を法令等で定めておき、実務上は各保険会社の内規・経営判断等を中心に運営していく「プリンシプルベース」での保険監督がグローバル・スタンダードになっていくでしょう。その際、専門職としてアクチュアリーの役割は、今以上に拡大され、それに伴いより多くの責任と権限が、アクチュアリーに与えられるかもしれません。
2.インシュアテックの台頭
詳細は、別のコラム『健康増進型保険とアクチュアリー(その2)』をご覧いただければと存じますが、AI時代に相応しい保険制度の構築に向けて、世界中で様々な技術が猛スピードで進化しています。シンギュラリティという言葉を聞かれたことがあるかもしれませんが、AIの進歩は既成概念を打ち破る画期的なアイデアを次々と産み出す可能性を秘めているようです。古い映画ですが、『猿の惑星』が現実になる日が来るかもしれません。
3.査定基準の緩和
少子高齢化で、生命保険の新契約減少を余儀なくされているため、各生保は、なんとかして新契約の挽回を目論んでいるところです。一方で、インシュアテックの進歩により、保険料率のより一層のリスク細分化も可能になってきましたが、そのためには、より多くのデータが必要になります。
これらの課題を一気に解決する策として、査定基準を出来るだけ緩和して、より多くの契約を獲得してデータを蓄積し、その結果を用いて新たな保険料率を導入する、一種のPDCAサイクル的な仕組みを導入する動きが既に始まっているようです。
ビッグデータの収集は、保険業界に限らず、全ての企業にとってキーワードになりそうですね。
4.加入プロセスの簡素化
顔認証技術の向上が、保険加入プロセスに劇的な変化をもたらすでしょう。BMIはもちろん、喫煙状況や、眼球やほっぺたの色などから、既往症や将来の疾病罹患の種類、その可能性など様々な情報を得ることができるかもしれません。逆に言えば、従来の紙ベースによる告知をしつつ、仕掛けたカメラで顔写真を撮影して、引き受け判断に使用するという可能性もあります。
5.異業種の参入
これからの保険業は、信頼できるデータを色々な切り口で、いかに多く持っているかがで決まるようにも思えます。例えば、スマホのキャリアサービス会社は、日々膨大なデータを自然に収集しているでしょうから、それらを保険販売などに有効に活用する手段が構築できれば、強力なツールとなるでしょう。
また、タバコ会社のように、ある特定のマーケットデータを保有している会社も喫煙者(禁煙者)死亡率などの精緻なデータを駆使すれば、新たなビジネスチャンスに繋がる可能性が充分にあります。実際、世界的なタバコメーカーである米国のフィリップモリス(Philip Morris)社は、禁煙者向けの生命保険に乗り出す模様です。
https://www.cnbc.com/2019/04/23/tobacco-company-philip-morris-launches-life-insurance-company-reviti.html
いかがでしたか。かつて、『自〇党をぶっ壊す』と宣言して総裁選を勝ち抜いた政治家もいらっしゃいましたが、まさに、AI時代の保険業では『既成概念をぶっ壊す』ことで、新たなる一歩を踏み出そうとしています。日本がガラパゴス化しないように、かつ、アクチュアリーの仕事がAIに奪われないように、自己研鑽の日々が当分続きそうです。
(ペンネーム:活用算方)