アクチュアリーを目指したきっかけは何でしたか。
就職活動中に、友人からアクチュアリーという職種の存在を教えてもらい興味を持ちました。大学では数理系の学科に在籍し微分方程式を中心に勉強していたのですが、大学院への進学を考えるとき、「数学を使って仕事をする」道を現実的に考え始めました。そこで、実際の社会でも多く使われている統計学を選択。アクチュアリーはまさに勉強してきたことを生かせる仕事ですし、もともと保険の仕組みにも興味を持っていたので、これだ、と思いましたね。
卒業後は、ソニー生命に入社。どんな仕事をしていましたか。
数理部に配属され、主に決算業務を担当。貸借対照表のうち、保険契約準備金の計算を中心に進めていました。自分が作った数字がステークホルダーのもとに届く。責任の重さと同時にやりがいも感じていました。なにより、会社の数字がどのようなプロセスで作られているのかを知れたこと、保険料の算出方法など保険商品が生まれるまでの流れを見られたことが面白かったですね。
現在も勉強を継続中とのことですが、仕事と勉強をどのように両立してきましたか。
ソニー生命にいる間に、1次試験5科目中3科目まで合格しました。意識してきたのは、勉強する習慣を体にしみこませること。ソニー生命はフレックスタイム制だったので、朝早く会社の近くのカフェに行き、1時間半は必ず勉強するようにしました。「この1問は解く」「ここまではやる」など小さな目標を立て、予定通りに終えられなかったときや復習が必要なときは夜帰宅後にやることも。試験の2、3カ月前は土日も使ってラストスパートをかけることで、集中力を高めていきました。朝の1時間半を勉強にあてる習慣は、転職した今も続けています。
また、一人で勉強していると飽きてしまうので、アクチュアリーの勉強仲間が集まる会に参加するのもオススメです。私は参加したのはアクチュアリー受験研究会という集まり。問題を一緒に解き、どうやって解いたかを発表することで、仲間たちから「こうやって解く方法もあるよ」などと自分にはない視点を得られることができます。考え方が柔軟になり、解くスピードもはやくなる。とてもいい刺激になります。
ソニー生命で経験を積んだ後、アビームコンサルティング株式会社への転職を決意。その理由は何でしたか。
アクチュアリーの視点も生かしながら、いろいろな人と関われる仕事に挑戦したい…と考え、コンサルタントという仕事に興味を持ったんです。アビームはもともと多くの保険会社をクライアントに持つコンサルティング会社で、私が入社し、金融業界の中でも保険会社の担当になることで、自分の強みを生かせるんじゃないかと考えました。
社内のアクチュアリーの数は保険会社ほどではないので、専門知識は自分で調べるしかありません。前職では、周りは知識を持ったアクチュアリーの先輩だらけで甘えていましたが、今は、分からないことはすぐに調べて自分が説明できるように準備することで、より知識が深まったように思います。
現在は、保険会社のお客さまを中心に担当させていただいています。アクチュアリーではない方と仕事を進めることも多く、例えば「日本基準とIFRS(国際会計基準)で保険の定義はどのように異なるのか」、「責任準備金はどのように計算されているのか、その時価評価はどういうイメージになるのか」という質問を受けることも。説明する際、相手の理解度をしっかり把握した上で話を進めることが、コンサルタントに求められること。前職では、みんな分かっている前提で考えもしなかった基本的なことを改めて考えるのはとても面白く、一歩引いた俯瞰的な視点で物事をとらえられるようになりました。
コンサルタントの仕事を通じて、これから手掛けたいことは何ですか?
“アクチュアリーかつコンサルタント”という人はまだまだ少ないですが、自分がより力をつけることで、アクチュアリーという職業がもっともっと認められるようになりたい。とくに金融業界へのコンサルティングにおいてはアクチュアリーの知識が役立つことが多く、アクチュアリーが活躍するひとつの道として、切り拓いていきたいですね。
■プロフィール
竹中紳治(しんじ)さん
アビームコンサルティング株式会社 金融統括事業部に在籍。神戸大学大学院人間発達環境学研究科を卒業後、ソニー生命保険株式会社に入社。数理部にて経験を積んだのちに現職へ。アクチュアリー1次試験3科目合格。