アクチュアリー試験講評(2018年度 2次試験:生保2 編)


2018年度のアクチュアリー試験問題が日本アクチュアリー会ホームページで公開されています。受験された方々は、本当にお疲れさまでした。

合格発表まであと2ヶ月程度ありますので、受験された方も、これから受験される方も気を緩めず、今のうちから試験準備を始めたいところですね。

早速、生保2について講評いたしますので、受験生の一助となれば幸いです。

1.問題数など
配点が多少異なりましたが、問題数は昨年度と同じでしたので、受験生にとって、特段大きな混乱はなかったと思われます。
また、今年度のトピックであった、
・生保標準生命表2018の導入
 につきましては、生保2では明示的に出題されませんでしたが、逆に、来年度以降の出題の可能性が高まりましたので、勉強した内容を忘れないようにしたいですね。

2.各問題のポイント
問題1(1)
解法:保険業法施行規則第68条に規定されている、標準責任準備金の対象外契約についての穴埋め問題です。特に、変額年金保険に関する規定が整備された、平成17年度以降の規定に関するものですので、同条第3項が該当します。過去問でも何回か出題された頻出論点ですので、是非正解したい問題です。
類題:平成21年度問題1(1)、平成15年度問題1(1)

問題1(2)
解法:責任準備金対応債券を特定するための5つの要件を列挙する問題です。昨年度の問題1(2)でも邦貨建債券の保有目的区分に関する出題があり、そこで責任準備金対応債券が登場しましたので、準備していた受験生も多かったかもしれません。なお、日本公認会計士協会から出されている『業種別監査委員会報告第21号』(https://jicpa.or.jp/specialized_field/files/00397-001034.pdf)まで遡って勉強されると良いでしょう。
類題:平成15年度問題1(4)

問題1(3)
解法:保険会社向けの総合的な監督指針からの問題です。資格試験要領によれば「監督指針」のうち適宜参照すべき範囲を列挙していましたが、その中に、「Ⅱ-2-4 生命保険会社の区分経理の明確化」が含まれていましたので、資格試験要領に沿って準備した受験生にとっては易しい問題でしょう。
類題:平成20年度問題1(2)

問題1(4)
解法:生保1を含めて、最近、二次試験でも計算問題が出題されるようになりました。損益計算書等に基づき利源分析の各利源を求める問題ですが、一次試験である生保数理の内容を思い出しながら確実に得点したいところです。特に、予定事業費および予定利息という管理会計上の勘定科目を両建てで用いることで、各利源全体の合計額が損益計算書上の損益に一致するような仕組みであることを正しく理解していれば、それほど複雑な計算にはなりません。なお、二次試験で出題された計算問題のパターンはそれほど多くありませんので、過去問を研究して、幾つかのパターンに類型化しておきましょう。
類題:平成22年度問題1(4)

問題1(5)
解法:変額年金保険等の最低保証リスクに係る責任準備金を評価するためのアプローチに関する問題です。生保1の教科書でもある『第5章 変額年金保険』は、その一部が生保2の教科書にもなっているため、この第5章を最初に勉強することが二次試験突破の近道かもしれません。教科書5-11ページおよび5-16ページに登場するCTEアプローチおよびリスク調整済み期待値アプローチは、変額年金保険において極めて重要な論点ですので、これから受験される方は是非押さえておきたいですね。
類題:平成21年度問題2(1)

問題1(6)
解法: ハードル・レートの設定方法である「トップ・ダウンアプローチ」と「ボトム・アップアプローチ」を簡潔に説明する問題です。教科書7‐16~20ページを簡潔にまとめれば良いでしょう。なお、受験経験の浅い受験生にとって、教科書『第7章 内部管理会計』は、まさに『ハードル』が高い(笑)テーマかもしれませんが、この問題のように、単に教科書の内容を暗記するだけで得点できる問題も出題されますので、あきらめずに、教科書の全範囲を一通り勉強する習慣をつけると良いでしょう。

問題2(1)
解法:実務基準に規定されている公正・衡平な配当について、その要件および確認概要を簡潔に説明する問題です。実務基準が制定された平成8年度以降、頻出論点ですので是非、得点したい問題です。特に、問題2の場合、問題1と異なり高得点が期待できますし、責任準備金や契約者(社員)配当は、アクチュアリーとして基本中の基本テーマですので、実務基準の内容をそのまま暗記するくらいの気持ちで勉強されると良いでしょう。特に、本問の場合、平成23年度問題2(3)と同じ問題ですが、上述の通り、アクチュアリーにとって基本的なテーマであるからこそ、繰り返し出題されるといえるでしょう。
類題:平成23年度問題2(3)

問題2(2)
解法:保険種類別に事業費効率を把握することの目的、結果の利用方法について簡潔に説明する問題です。問題2(1)と同様に、本問も、平成20年度問題2(2)と同じ問題ですので、保険種類別に事業費効率を把握することは、アクチュアリーにとって基本的なテーマといえるでしょう。
類題:平成20年度問題2(2)

問題3(1)
解法:生命保険会計について、その意義および特徴について簡潔に説明させるといった、頻出問題です。生保1と異なり、生保2では時事問題という概念があまり馴染みにくい面もありますが、その分、頻出論点を重点的に学習することで、決算業務に従事していなくても、十分に合格点を狙えるチャンスがある点が、生保2のメリットの1つと言えるでしょう。なお、問題文にある各条件(例.管理会計必要性、国際的に統一された会計基準など)は、今後のアクチュアリーにとって避けられないテーマですので、正会員になった後でも、常に勉強する気持ちを持ち続けるようにすると良いでしょう。
類題:平成27年度問題2(1)、平成14年度問題2(1)

問題3(2)
解法:生命保険会社におけるソルベンシーの適切な評価について、静的および動的なソルベンシー検証について簡潔に説明させる問題です。また、解答に当たっては最近流行のERMや生命保険会社のグローバル展開にも触れさせるなど、正に、現在の生命保険会社が直面している課題について、自分自身の言葉で説得できるかという点が問われています。なお、今年の生保2では、所見問題に類似する過去問がともに平成27年度である点が非常に特徴的です。
類題:平成27年度問題2(2)、平成15年度問題3(1)

3.次回以降に向けて
第Ⅰ部対策としては、教科書や監督指針などを丁寧に読み進めながら、キーワードになりそうなところをチェックしておき、復習の段階で、自分だけのオリジナル予想問題を作成するレベルに達することを目標にすると良いでしょう。
また、第Ⅱ部対策としては、生保1と同様に、今回は、標準生命表の改定に関する問題は出題されませんでしたので、過去問から標準生命表を絡めた所見問題を探すところからスタートしても良いでしょう。

(ペンネーム:活用算方)

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