2018年度のアクチュアリー試験問題が日本アクチュアリー会ホームページで公開されています。受験された方々は、本当にお疲れさまでした。
合格発表まであと2ヶ月程度ありますので、受験された方も、これから受験される方も気を緩めず、今のうちから試験準備を始めたいところですね。
早速、生保1について講評いたしますので、受験生の一助となれば幸いです。
1.問題数など
配点が多少異なりましたが、問題数は昨年度と同じでしたので、受験生にとって、特段大きな混乱はなかったと思われます。
また、今年度のトピックであった、
・生保標準生命表2018の導入
・教科書 第4章 生命保険の商品開発 の導入
につきましても、それぞれ出題がありましたので、事前準備をしっかり行った受験生にとっては、取り組みやすかったのではと考えられます。
2.各問題のポイント
問題1(1)
解法:アセットシェアの定義および代表的活用事例を列挙する頻出問題です。教科書『第3章 アセット・シェア』3‐1~2ページという、まさに最初のページからの出題でしたので、問題1(1)に相応しい基本中の基本と言えるでしょう。
類題:平成17年度問題2(2)、平成14年度問題1(1)、平成12年度問題1(4)
問題1(2)
解法:今年度から教科書に加わった『第4章 生命保険の商品開発』から、「事後モニタリングと改善アクション」の目的を説明し、具体的な改善アクションを等を例示する問題です。特に、保険料が不足する恐れがある場合に『保険料率変更以外』の改善アクションをイメージする点が難しかったかもしれません。教科書4-21ページに従えば、『危険選択基準の見直し』が正解となるでしょう。
問題1(3)
解法:商品毎収益検証のモデル選定時の論点を4つ列挙する問題でしたが、過去問で出題された問題でしたので、是非得点したいところです。教科書10-52~53ページの内容を書けば良いでしょう。
類題:平成13年度問題2(2)
問題1(4)
解法:保険会社向けの総合的な監督指針からの問題です。資格試験要領によれば「監督指針」のうち以下の範囲を中心に適宜参照とのことでしたので、当該範囲を丁寧に勉強していればスラスラと解ける問題でしょう。
・Ⅱ‐2‐5 商品開発に係る内部管理態勢
・Ⅳ 保険商品審査上の留意点等(Ⅳ-3 第二分野を除く)
問題1(5)
解法:変額年金のプライシングの基本的考え方に関する問題です。教科書5-21~22ページからの穴埋め問題ですので、キーワードに注意しながら教科書を読む習慣をつけると良いでしょう。なお、教科書には、『最低保証費用率』という単語と『最低保証料』(←教科書5-5ページなど)という単語が登場しますので、混乱しないように注意しましょう。
問題1(6)
解法:最近、二次試験においても「計算問題」が出題される傾向にありますが、今年度も出題されました。ただし、従来の頻出論点であった「アセットシェア計算」ではなく「団体定期保険の優良団体割引」という、ややマイナーな論点でした。教科書6-20に登場する公式を用いれば被保険者数Nが計算できますが、二項分布の標準偏差について√の中の分子が「γ(1-γ)」ではなく「γ」になっている点も実務上の簡便性と理解しておけば良いでしょう。なお、二次試験で出題された計算問題のパターンはそれほど多くありませんので、過去問を研究して、幾つかのパターンに類型化しておきましょう。
類題:平成19年度問題1(3)
問題2(1)
解法:生保標準生命表2018(死亡保険用)の作成過程に関する問題です。変更点はもちろん、その変更理由も触れる必要がありますので、作成過程をしっかりと理解しておく必要があります。死亡率の改善傾向の折り込み、選択効果の反映年数、第3次補整など、生保標準生命表2007からの変更点について、単なる暗記ではなく、変更理由を含む総合的な理解を問う問題と言えるでしょう。
問題2(2)
解法:金利上昇時に解約が多発する、いわゆる、ディスインターミディエーションにおいて、解約返戻金の支払財源を確保するために保有資産を売却する『流動性』に関する問題です。教科書2-36~39ページを記述すれば良いでしょう。
問題3(1)
解法:低金利環境の継続に長寿化というダブルパンチが個人年金保険の販売低迷の要因になっていますが、その打開策を問う時事問題です。幸い、平成25年度に類題が出題されていますので、事前準備し易かったかもしれません。なお、問題文にある『死亡者の持ち分を生存者に移す』という論点に対して『予定解約率の導入』は論旨がずれますので、例えば、(年金開始後の)保証期間をなくすことが、工夫の一案として挙がるでしょう。
類題:平成25年度問題3
問題3(2)
解法:ライフスタイルの相違を保険料率に反映させる保険商品としては、例えば、非喫煙割引が有名ですが、今回は、日常的な運動習慣という新たな切り口からの出題です。教科書1-38~45ページの内容を踏まえて、①の解答を作成した上で、それらの論点に対する所見を書くという流れになるでしょう。なお、日常的な運動習慣としては、例えば、日々の平均歩数やスポーツジムなどの習慣で保険料を割り引く、いわゆる『健康増進型保険』という括りで最近、日本でも注目されていますが、まさに、時事問題に相応しい出題と言えるでしょう。
類題:平成22年度問題2(1)
3.次回以降に向けて
第Ⅰ部対策としては、今回は、『標準生命表2018』の導入初年度ということもあり、代表的な『死亡保険用』について『2007』との違いが出題されましたので、来年度は『第三分野標準生命表』に関して、今回と同様に作成方法の違い(その理由を含む)を整理するところから始めてみれば、スムーズに試験対策がスタートできるかもしれません。
また、第Ⅱ部対策としては、今回は、標準生命表の改定に関する問題は出題されませんでしたので、過去問から標準生命表を絡めた所見問題を探すところからスタートしても良いでしょう。
(ペンネーム:活用算方)